ガラス転移温度や癒着を意識してヘアアイロンを使う

ヘアアイロン使用時の注意点

ヘアアイロンの目的の一つに、ケラチンのガラス転移温度を利用してコルテックスやキューティクルの形を戻らないように変形させることがあります。

例えば板ガムを考えた場合、ある温度まで温めると板ガムは柔らかくなり、変形させた後でまた温度を下げると固まり、元の形に戻らなくなります。

この物質の形を可逆的に変えることができる温度のことをガラス転移温度といい、物質によりその温度は異なります。

ケラチンタンパク質の場合、ドライの状態で110℃~150ぐらいが可逆的なガラス転移温度であり、150°Cを超えると黄色く変性して不可逆的な炭化が始まります。

ヘアアイロンの設定温度と、実際に髪に伝わる温度は少し差があるので、一般的には、乾いた髪に160℃〜180℃に設定したヘアアイロンを毛髪に短時間あてることで形を変形させています。

しかし、わずかな時間のアイロン操作でガラス転移温度に上げることは非常に困難であり、逆に高温のアイロンでプレスし過ぎると、毛髪の温度が150°Cを簡単に超えて炭化させてしまう危険性もあり、アイロンの温度管理は非常に難しいと言えます。

ガラス転移温度を下げる

髪も同様に、圧力容器のような密閉された構造であることを利用し、アイロン前の乾燥を8割ドライ(髪の表面が乾き、内部に水感がある状態)にすることで、圧縮蒸気を髪の内部に発生させてガラス転移温度を下げることができます。

圧縮蒸気を髪の中で作りやすくするためには、アイロン前に髪が水を含んだ状態で70°C~80°Cぐらいに温度を上げることが必要で、例えば、8割ドライした髪にアイロンを沿わせることで髪の温度を上げておき、アイロンを軽くプレスして滑らせることで内部に圧縮蒸気を発生させることができます。

また、「浸透促進原液」で毛髪内部の水分量を増やしておく処理も効果的です。

癒着を防ぐ

アイロン施術において、ダメージで髪のCMCが不足している場合は、アイロンの高熱によりケラチンであるコルテックス同士が癒着してしまわないようにCMCをアイロン施術前に髪へ浸透させておきます。

癒着毛になると、パーマ剤やカラー剤が浸透しにくくなり、水の呼吸もできなくなるためにバサついた硬い髪質に変わってしまいます。

コテパーマ・アイロンストレート・ホット系パーマの熱処理では、癒着させないよう最大の注意が必要です。

関連記事